悪魔なキミと愛契約
「信じてもらえないかもしれないけど、私、この屋敷で、2度チヅルさんに会ってるんです」
「まさかっ!!」
「本当です。
庭で会った時には、フランさんと出会った時のことを教えてくれました。
バラの花を見ながら、フランさんの第一印象や、どうやってフランさんと仲良くなってアタックしたか、とてもおちゃめに話してくれました」
「………」
「フランさんの好きだったバラの花を、チヅルさんも好きになって。
2人の想いが通じあって、ルカがお腹の中に宿って。
それを話しているときのチヅルさんの横顔は、とても幸せそうでした。
私はチヅルさんに似ているから、きっとルカの心も変えられるはずって。
また、ルカと他愛無い会話をしたい、と、言っていました」
「母上が…そんな事を……」
「私、思うんだ」
私は、眉間にグッとシワを寄せるルカを見て言った。
「チヅルさん、私に、これを伝えてほしくて私の前に現れたんじゃないかな」
「……伝える?」
私は、コクン。 と、頷いた。
「ルカやフランさんに、“私はとても幸せだった”って、“心配しないで”って。
それを伝えてほしくて、私の前に現れて、幸せだったころの思い出を私に見せてくれたんじゃないかな」
「……チヅル」
フランさんの瞳が揺れた。
「チヅルさん、言ってました。
“フランは、たまに私に会いに来てくれる”って。“こんなおばあちゃんになっても、前と変りなく愛してくれている”って」
「………」
「“でも、たまにとても寂しくなるときがあって、そういうときは、庭に出て、フランの好きだったバラを眺めるようにしている”って」
「………」
「チヅルさん、フランさんと出会えて、本当に幸せだったんでしょうね」