悪魔なキミと愛契約
「フランと出会ったのは、私が20歳のときよ」
チヅルさんは、とても愛しそうにバラを眺めていた。
「私はとても貧しい家で育ったものだから、高校を卒業してすぐに職に就いたの。
私は長女だから、両親の負担を減らそうと思ってねぇ」
チヅルさんは微笑みながら私を見た。
「フランを初めて見たのは、会社の食堂だったの」
「え? 食堂?」
どうしてそんなところで……
「ビックリするでしょう?
フランは、私と同じ会社に勤めてたのよ。
部署は違ったけどね」
「え?
大魔王なのに?」
私は素っ頓狂な声でチヅルさんに聞いた。
「フフ。
あの頃はまだ王子だったから」
それでも、なぜ悪魔が人間界で仕事を?
「王族の教育の一環として、『人間界で会社に入って働く』っていうのがあったらしいの」
「そ、そんなものが」
「今だって、私達が気づいていないだけで、人間界にはたくさんの悪魔が人間と一緒に生活しているのよ?」
「そうなんですか?」
私が目を丸めると、チヅルさんはフフっと声を出して笑った。