ダルターニの長い一日
木の根元から、ひょっこり頭だけを出すように仰向けになって空を眺めながら、ハーリーは独り言で呟いていた。

風が冷たくなり始めた季節。草の上でハーリーの白い絹のブラウスがハタハタと揺れている。でも、風の冷たさは、寒いと言うより気持ちがいい。


ハーリーは空を眺めながら、一人、物思いにふけっていた。



(今日は、どんなにサボっても、僕を叱る奴はいない!昨夜から、家庭教師の煩いアカザは熱でうなされて寝込んでいるのだから。あの怖い爺さんに、尻に注射でも打たれているのかな、アカザの奴?フフフッ)



物心がついた頃から世話をやいてくれていたシュレイツ。彼は今、国王から別の役割を言いつけられ、城に顔を見せるのは三日に一度、“陽の去の刻”の頃。



(彼が僕から離れて行ってしまってから随分経ったけど、あれから一度もまともに顔を合わせていない。だって、シュレイツが来る時刻は、僕がいつもお勉強をしている時間なんだもの。

運のいい事に今日はシュレイツが来る日、アカザもいないし、シュレイツに会えるんだ!シュレイツ、久しぶりに会って、どんな顔をするかな? 僕、少し背が伸びたよ・・・・・!)



そんな、ハーリーの心の中の独り言を遮ったのは、まだ幼い少女の叫び声だった。



「お兄たま見~っけ!」

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