ダルターニの長い一日
「お兄たま、新しいドレシュなの」

「あっそ、良かったね」

「お兄たま、一緒に遊びましょお」

「いやだよ、お前と遊んでも面白くないし!」 



実の兄、ハーリーを誰よりも慕うエルミラーラにとって、彼に突き放される事は、地面と挨拶を交わすより応えてしまうらしい。



「・・・う・・・えっ・・・・・・ん」

(げっ、やばい。今度こそ本当に泣く!)



ハーリーがそう思った時には、既にエルミラーラは、その闇色の眸に涙をいっぱい溜め、大きな泣き声を上げようとしていた。半身を起こしたまま、ハーリーは慌てて鼻頭に人差し指を当てながら、もう片方の手をエルミラーラの口に当て、エルミラーラが大きな声を上げて泣こうとしているのを何とか止めた。



「し~っ!大きな声を出さないで。此処は僕の秘密の場所なんだから、他の人達にばれたら大変だろう」

「ひみちゅのばしょ?」



エルミラーラは、くりっとした闇色の双眸で、きょとんとハーリーを見つめた。



「そう、お勉強や、ピアノやダンスのレッスンをサボっているのがアカザにバレたら、僕がアカザにゲンコツをされるんだ」

「ゲンコ?お兄たま、かわいしょ・・・・・エルおっきな声出さない」

「いい子だ!じゃあ、エル、かくれんぼをしよう」
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