紅月 -AKATSUKI-
Ⅲ【冷たい愛】
「おはよう」
僕はカーテンを開けて、イスに腰掛けるキミに話し掛けた。
キミは何も言わず、俯いてる。
あ、太陽の光に照らされてる、ここから見るキミの横顔はこんなにも美しかったんだね。
長年一緒にいるのに、はじめて知ったよ。
「朝日は綺麗だね。あ、もちろんキミの方が綺麗だよ?」
笑ってみせるけど、キミは相変わらず俯いたまま。
あれ、怒っちゃった?
朝日に嫉妬して、すねるキミはかわいいなぁ。
「朝ご飯、用意したよ。キミの好きな物も用意したから、一緒に食べよう。ね?」
僕はそう言って、微笑みながらキミに近付く。
刹那、思い出す。
「……あぁ、そうだった」
目の前にいるのは、魂の宿ってないヌケガラだということに。
「キミは死んじゃってたんだ、忘れてたよ」
殺したのは、僕。
僕はキミが大好き。
大好き故に……
誰かに触れられたくなくて、
自分のモノにしたくて、
うっかり殺しちゃったんだ。
でも後悔はしてないよ?
だってこれでキミは僕のモノになったんだから。……否、僕のモノなんだから。
苦しかった?ごめんね、僕はキミが大好きだから。大好き故に行った行為だから。許してね?
でも僕は、楽しそうに笑うキミのことが大好きなんだ。
笑わないキミなんて、キミじゃないよ。
僕のモノにした行為は……どうやらムダだったみたい。
ごめんね、苦しかったよね。
ごめんね、僕はわがままだね。
ごめんね、こんなに謝っても、僕はやっぱり。
キミが大嫌いだ。