紅月 -AKATSUKI-
Ⅵ【パズルとピース】
僕は死にました。
さて、何が変わった?
何がどうなった?
パズルのピースがひとつ欠けたんだ。
それなのに、何も変わらない世界。
ただ泣く人がいて、
悲しむ人がいて、
ただ、それだけ。
僕が死んだことをキッカケに、次々と人が死んでいくような奇妙な事件が起きるわけでもない。
僕が死んだことで、世界が終末をむかえるわけでもない。
ただ、いつもと同じ世界がそこにあるだけ。
あなたは笑い。
あなたは泣く。
あなたは怒って。
あなたは暇を潰してる。
変わらない世界。
なんて、つまらない。
僕には世界を変えるほどの力を持っていなかったんだ。
僕が生きている価値は、その程度だったんだ。
世界ひとつ変えられないほど、ちっぽけな価値の人間だったんだね、僕は。
キミは明るくて友達も多くて、僕より好かれているけれど、キミが死んでも世界は何一つ変わらないんだろうな。
――ただ、泣く人や悲しむ人が僕の何倍も多いだけで。
ピースの量が多いパズルは、ピースが一つ欠けても、一見…どこのピースが欠けているのかわからない……つまり、何も変わらない。
それと同じように。
あなたが死んでも、世界はきっと何も変わらないんだろうね。
きっとこのままだから、世界はいつまで経っても“世界”のままなんだ。
世界は、今日もまわってる。
僕がいなくても、ゆっくりと世界はまわってる。