紅月 -AKATSUKI-
Ⅶ【似たもの同士】
“子供は親を選べない”
という言葉がある。
うん、本当だね。
「僕のお母さんは、あの女の人がいいな」
「そう、じゃあ今からあなたはあの人の子供ね」
なんてさ、ムリだよね。
選べないね。
でもさ。
親も同じで、子供を選べないんだよ。
「私、優しくて笑顔ばかり浮かべる、勉強の出来る子が欲しいな」
「じゃあ、今からその子供を産もう」
……ムリだよね。
虐待ってさ、もしかして自分の想っていた子と違うから……
違うから、ムカついて暴力を振るうのかな?
だから僕も、今暴力をうけているのかな。
僕、お母さんの望んでいた子供じゃなかったんだね。
お母さんは僕のこと、嫌いなんだね。憎んでいるんだね。
でもねお母さん。
僕もお母さんに思っていることがあるんだ。
僕ね、嫌なんだ。
もう…うんざりだよ。
この世界に。
……あなたに。
この世界に生んだあなたが、僕は大嫌いです。
あなたが僕を憎むように、僕もあなたを憎んでいます。
あなたは僕の死を望んでいるのでしょう。
安心して下さい。
僕もあなたの死を、望んでいます。
叶うことなら、この手であなたを――。
――いえ、なんでもないです。
僕はただただ生きます。
あなたより力が強くなる、その時まで。