BEST FRIEND
そして夏海が病室に近付くと、病室の前で恵の叔母さんが叔父さんの胸の中で泣いていた。叔父さんは叔母さんの背中を擦ってあげ、夏海に気付くと涙を堪え目を逸らした。
それがすごく胸に突き刺さった。
夏海は鼓動が速くなるのを感じながら静かに病室に入る。
いつも静かな病室だが、さっきまでの雰囲気と明らかに違う。
音らしい音が無い静寂。無音の世界で恵はベッドの上に寝ていた。
目を開けないのはいつもと変わらないが、栄養を取る為の管が全て外されていた。
「恵…」
心臓の音がうるさい。全身に嫌な汗が流れ気持ち悪い。今すぐ病室から出て行きたいが、足は動かない。
頼む。夢であってくれ。
僅かな希望を抱きながらそっと恵の手に触れる。
「……」
意識が飛びそうになった。
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