BEST FRIEND
何も出来なかった自分。愛する人を守れなかった悔しさ。あの時、無理やりにでも恵を連れて逃げればよかったという後悔。
様々な思いが頭と心に溢れ、夏海は声を上げて泣いた。
「恵!恵!戻って来いよ!私はずっと待ってたんだぞ!帰って来い!」
どんなに声を上げても、どんなに恵の体を強く揺さぶっても恵は微動だにせず眠り続けるだけだった。
こんなにも…こんなにも人は簡単に死ぬのか。
夏海はあらゆる気持ちを自分で処理する事が出来ず、窓を開け放ち飛び降りようとした。
五階から飛び降りて死ねば恵に追いつく。
だが背後から叔父さんに背中を掴まれ、そのまま床に押さえつけられた。
死への願望が強くなってしまった夏海は叔父さんの腕を握り締める。
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