山田さん的非日常生活
「や…、まだ、さん」

「は…っ、な、に?」

「ひと、つ、あやまり、たく…、て…っ、」

「えっ…?」

「きづ、かな…くて。ふあんに、させ、て…、しま…っ」

「はっ、…と、とりあえ、ず、止まって、話さ、ない…っ!?」


全速力に近いスピードで走りながらじゃ、必死すぎて言葉がとぎれとぎれだ。


車道沿いの夜の道。

テールランプの光が流れる、暗闇の中。


やっと止まったカボは、あたしの手を離すと、



そのまま、あたしを抱きしめた。


「か…、」
「山田さんが好きです」


肩で息をする。

酸素が足りない。


…頭の芯が、溶けるように熱くなる。


「好きです」

「………」

「好きです、山田さん」

「……カボ」

「大好きです」

「わ…、かった。わかった、から」


間近で見るカボの顔。

切羽詰まったようなカボの声。

愛しくて、苦しくて、胸の奥がぎゅっとなる。


ぎゅうっと。


あたしが唇を押し付けたのと、

カボもそうしたのは、ちょうど同じタイミングだった。



ねえ、カボ。


あたしもカボが好きで、




好きで

好きで

好きで、


大好きなんだよ。


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