山田さん的非日常生活
ちょっと憂鬱になりながら、ふと上を見上げる。
目が合って、カボはふわりと優しく微笑んだ。
「それと、山田さん」
「?」
「遅れましたけど…クリスマスプレゼント、受け取ってくれますか?」
あたしに向かって差し出された小さな箱。
レストランで投げつけちゃって、結局受け取れずじまいだったプレゼントだ。
そっと受け取ると、手のひらであたためるように包む。
「…目の前で開けちゃダメなんじゃなかったの?」
「もういいんです。なんかドロボーになりきったらふっきれました!!」
「…あっそう」
まん丸い月が見守る夜空の下。
カボからのプレゼントは、可愛いクラウンのペンダントトップがついたネックレスだった。
…王冠がカボチャみたいだったので。
カボは照れくさそうにそう言って。
あたしがあげたのもカボチャのストラップで、なんか二人とも一緒のこと考えてんだなぁ、とおかしくなる。
思っていても、どんなに近くにいても、そばにいても。
言葉にしなきゃ気持ちは伝わらないから。
失敗してもいい。怖がらなくていい。
うまく伝わらなかったら、もっかい伝え直せばいい。
カボはちゃんと、聞いてくれるから。
カボ、来てくれてありがとう。
あたしを見つけてくれてありがとう。
ケーキ、もう一度作らせてね。
またいっぱい、映画も観に行こうね。
たくさんたくさん、伝えたい言葉。
…でもまずは。
「カボ」
「はい?」
「…あたしも、カボが大好きだよ」
あなたに一番、伝えたい気持ちを。