山田さん的非日常生活
いつの間にか真新しい白から茶色く変化していたスニーカー。
肺の奥が痛い。でもそれは、心地よい疲労だった。
『またやろうね、お兄ちゃんとお姉ちゃん!』
満面の笑みを残して去っていった少年たち。
ずいぶんと憎たらしいことを言われもしたけれど、やっぱり子供は可愛いものだなぁ、なんて思ったりした。
オレンジ色になった太陽が、昼間とは違った風を連れてくる。
シートで1人、大の字になったまま空を見上げた。
「…おそいな〜…」
顔洗ってきます、と言い残して去っていったカボ。なのにいつまでたっても戻る様子がない。
一体どんだけ顔洗えば気が済むんだろう。
…というかカボチャを食べ過ぎても、顔って黄色くなるのだろうか。どうでもいいけれど。
募ったイライラは心の中でしびれを切らす。もともと気は長いほうじゃないのだ。
「あ〜…もうっ!」
どこをほっつき歩いてんだあのカボチャ野郎。
服の泥を払いながら、すっくと立ち上がると水道場がありそうな方へと走っていった。
家族連れももう帰る時間帯なのか、来たときよりも減っている色とりどりのシート。
くるくると落ち着かないニワトリみたいに頭を動かして、カボの姿を探す。
「……あ、」
赤や緑、カラフルなレインボーのシートより目立つ、金色。
水道場から少し離れたトイレの前に、頭1つ分抜きん出たソレはあった。
ホッとして、その背中に呼びかけた…その時。
「カボ───」
「え〜っ、東山さんっていうんですかぁ〜」
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