山田さん的非日常生活
夕日が彼の無駄に整った輪郭を浮き彫りにする。
少し照れたような、初めて見る彼の顔に心の奥がぎゅうっとなった。
ムッじゃなくて、ズンじゃなくて、ぎゅうっと。表情を次々に変える心臓はとても忙しい。
彼は一種の麻薬みたいなもので、あたしの脳細胞はきっと麻痺してしまったんだと思う。
好きだ、なんて言葉を貰ってしまったら、もうきっと手遅れだ。骨の随まで到達して。
…でも振り回されるばかりじゃ、なんだか悔しい。
悔しいから、あたしより頭幾つか分高い彼の腕をぐいと引っ張って、押しつけるように唇を奪ってやった。
ねえ、またピクニックに連れてって。
そん時はちょっとばかり頑張って、早起きしておにぎり、作ってってあげるから。
三角じゃないかもしれないけど、潰れてるかもしんないけど、
「…あたしも好き」
…ありがたく食え、バカ。