山田さん的非日常生活
…ということは。
急に背中がひんやりとしてきた。もしかしてあたし、ものすんごく場違いな場所に来てしまったんじゃないのだろうか。
抑えていたはずの緊張が勢いよくぶり返す。
まるで着の身着のまま敵地に放り込まれてしまったみたいだ。唯一の武器…今日のために持ってきていた菓子折りは、店で一番安かったおせんべいのセットのみ。
もう2ランクくらい上のにしとけばよかった!ていうかこの洋宅にそぐうようなこじゃれたケーキみたいなのにしとくんだった!
…というかそもそも、今までカボが少しもお金持ちらしい素振りを見せなかったのが悪いのだ。金持ちならコンビニのカボチャプリンじゃなくてしっかりしたビンに入ったトロットロの北海道生クリーム100パーセント使用!みたいなのを購入しようよ、っていうか自分が食べたいだけだけど!
「…カボの馬鹿」
「ええっ!?す、すみません」
玄関に向かうカボの背中にそう呟くと、カボは慌てて振り返ってあたしの横に並ぶ。そしてトロットロにとろけそうなほどにっこりと笑ってあたしの手を握ったのだ。
かあっと顔が赤くなるのがわかる。
「!?…いきなりなに…っ!?」
「今日の山田さんは面白いです」
「はぁ!?」
思わず大声になってしまって、誰もいないだだっ広い庭に反響してしまった。
「大人しかったり、怒ったり、赤くなったりで忙しいです」
「あたしがいつ赤くなったのよ!?」
「今とか、会ったばっかりのときとか」
「〜っ!!…あんたがあんなこっぱずかしいセリフ言うからでしょうが!」
『お姫様みたいです』
着ているワンピースがむずがゆくて仕方ない。いっそ今すぐ脱ぎ捨ててやりたいけど、それじゃあ彼女として紹介される以前に犯罪者だ。
繋がれていたカボの手を思いっきりはたいてやった。はたいてやったのに、カボはなんだか嬉しそうだ。訳が分からない。
こうなったら人生当たって砕けろだ、幸子!
いつの間にやら着いていた玄関。チャイムをならす前に息を整えていると、ドタバタとなにやら騒がしい音がした。
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急に背中がひんやりとしてきた。もしかしてあたし、ものすんごく場違いな場所に来てしまったんじゃないのだろうか。
抑えていたはずの緊張が勢いよくぶり返す。
まるで着の身着のまま敵地に放り込まれてしまったみたいだ。唯一の武器…今日のために持ってきていた菓子折りは、店で一番安かったおせんべいのセットのみ。
もう2ランクくらい上のにしとけばよかった!ていうかこの洋宅にそぐうようなこじゃれたケーキみたいなのにしとくんだった!
…というかそもそも、今までカボが少しもお金持ちらしい素振りを見せなかったのが悪いのだ。金持ちならコンビニのカボチャプリンじゃなくてしっかりしたビンに入ったトロットロの北海道生クリーム100パーセント使用!みたいなのを購入しようよ、っていうか自分が食べたいだけだけど!
「…カボの馬鹿」
「ええっ!?す、すみません」
玄関に向かうカボの背中にそう呟くと、カボは慌てて振り返ってあたしの横に並ぶ。そしてトロットロにとろけそうなほどにっこりと笑ってあたしの手を握ったのだ。
かあっと顔が赤くなるのがわかる。
「!?…いきなりなに…っ!?」
「今日の山田さんは面白いです」
「はぁ!?」
思わず大声になってしまって、誰もいないだだっ広い庭に反響してしまった。
「大人しかったり、怒ったり、赤くなったりで忙しいです」
「あたしがいつ赤くなったのよ!?」
「今とか、会ったばっかりのときとか」
「〜っ!!…あんたがあんなこっぱずかしいセリフ言うからでしょうが!」
『お姫様みたいです』
着ているワンピースがむずがゆくて仕方ない。いっそ今すぐ脱ぎ捨ててやりたいけど、それじゃあ彼女として紹介される以前に犯罪者だ。
繋がれていたカボの手を思いっきりはたいてやった。はたいてやったのに、カボはなんだか嬉しそうだ。訳が分からない。
こうなったら人生当たって砕けろだ、幸子!
いつの間にやら着いていた玄関。チャイムをならす前に息を整えていると、ドタバタとなにやら騒がしい音がした。
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