山田さん的非日常生活
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まるでツチノコを発見してしまったかのような反応だ。


学校の昼休み。チュッパチャプスをくわえたまま、ポカーンとあたしをふぬけた目で見つめる友人Aこと足立由佳。

試しにその口からチュッパチャプスを引き抜いて、また戻してみたが、足立はしばらく固まったまま動かなかった。


「え…え、え?…ええ!?」

「え?……絵の具」

「ぐ…グリコ」

「コアラのマーチ」

「チ…チュッパチャプス…じゃなくてっ!!」


バン!と机を叩いて、前に乗り出す。足立の鼻が、あたしの鼻に触れそうだ。


「山田彼氏いたの!?」

「あ…ああ、…ハイ…」

「で、今朝その彼氏からモーニングコールがあったと!!?」

「………ハイ…」


モーニングコールっていうか、ただの早朝迷惑電話である。

寝ぼけていたあたしの夢でないならば、今週末に温泉旅行の計画を突きつけられた気がする。


…てか今週末って。いくらなんでも急すぎるだろ、カボ。

親にもカボの存在はちゃんと話していないし、一泊旅行なんてとてもじゃないけど言い出せない。

ということで、足立に週末のアリバイを頼むしかなかった、といういきさつである。


はぁっと大げさなため息をついて机に突っ伏す友人、足立。


「…アンタは絶対お見合い婚だと思ってたわ…」

…失礼な。


「まぁ、彼氏ができた過程はおいおい聞くとして。いいよ、アリバイ。あたしんちに泊まることにしたげる」

「ホント!?ありがと足立──」

「つか、それよりアンタ、こんなとこでボリボリお菓子なんか食ってていいわけ?」


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