山田さん的非日常生活

レジにいると嫌でも目に入る、ピンク色のバレンタインのコーナーが憎い。

明日になれば、バレンタインが終わればあのチョコたちは二割引きにでもなるのだ。

…1日違うだけで価値を上げ下げされちゃあ、チョコレートもたまったもんじゃないね。品質も味も変わらないのに。


レジの下に転がるカバンから、少しだけのぞいたピンク色の箱。


この子も、もうすぐ特別な意味を為さなくなる。

込められた気持ちも、行き場を無くしたまま。


…頑張ったのに。

すんごい、頑張ったのに。



…ああ、だめだ、なんか、



「───っ、」



泣きそう。






─コトン。


「………?」

レジ台の上に、何かが置かれる音がした。


ゆっくりと目線を上げる。


「こんばんは、山田さん」


ちょうど10のところを指した、時計の長針。

のせられていたのはプリン容器。


やっぱりそこには、うっとおしいほどの笑みを顔一面に貼り付けた…カボがいた。


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