『想いのカタチ』 (短編小説)
一ノ瀬:「行かなくて良かったの?」
佐野:「俺はそういうの興味ないから(笑)」
一ノ瀬:「そぉ…。渡って全然興味示さないよね、そういう事に」
佐野:「そうでもないけど」
一ノ瀬:「何でしないの?そういう話」
ベッドに寝転んだまま書き溜めた原稿に目をやった。ペラペラと捲りながら話していると、佐野は机の前の椅子をベッドの横へと滑らせた。
佐野:「ねぇ、蒼」
呼ばれるままに顔を上げると 突然、渡の顔が近付いた。そして、唇が優しく重なる…。
目を丸くしたまま動けず 静かに瞬間(とき)だけが流れる…。今の状況を理解出来ず、頭の中が真っ白になったまま ただ間近にある渡の顔を見詰めるしかなかった。どのくらい瞬間(とき)が流れたのだろう…。しばらくして 渡の体温が離れていくのを感じた。