Long Road
「ひょっとして、さっき式でバイオリン弾いていた人?」
突然、頭上から声がした。
見上げると、綺麗な顔立ちのアジア人が
悪びれもない屈託のない笑顔で立っていた。
なんだか、つられて笑い返してしまった。
「ええ。あなたも参列していたの?」
「ああ。実は、さっき聞いた演奏があまりにも素晴らしくて、
耳から離れなくて、アルコールで頭を落ち着けてから
寝ようかと思ってここへ来たんだ。
まさかその張本人に会えるとは思わなかった。」
どう見ても、わたしより年上の男性が、
興奮した様子で、舌足らずな英語を使って
懸命に話しかけてくる姿は、
微笑ましかった。
「ああ・・・すまない。急に話しかけたりして。
驚かしたよね。
あまりにもタイミング良すぎたっていうか・・・。」
わたしは、微笑んだ。
「良かったら、ご一緒にどうぞ。
わたしも、ちょっとさっきの式の興奮を冷ましがてら、
一人でコーヒーを飲んでいたところなんです。」