Long Road
Act.3
「どうして? 弾くことを辞めるなんてできるの? あなたに?」
「・・・疲れたんだ。」
「あんなに、弾くことが好きなのに? もう楽しくないの?」
「楽しむ?弾いているときに、そんなこともう感じないよ。
ただ、無心になるだけ。君は違うのか?
僕らは自分の心を注いで、むしろ削って、演奏しているんだ。」
「・・・わたしは、違う・・・。」
「本当に? それは、嘘だ。
大なり小なり、芸術家はそうしているはずだ。
だから、その作品には、その人の魂が感じられる。
君だって・・・、弾き終わった後は、使い切ってしまった表情をしているよ。」
「・・・。」
「僕は、本当に疲れてしまったんだ。
擦り切れたのかもしれない。
でも、結局は擦り切れてしまうほどの才能しかなかったんだ。
もう、自分の音が聞こえない・・・。」