Long Road
「奏花、帰りヒマ?」
「うん?何かあるの?」
「あのね、すごくおいしいケーキ屋さんがあるの。今日は反省会もかねて行ってみない?」
「行く!」
さゆりちゃんは、ふふふ、と笑った。
彼女は、わたしの思い描く日本の学生そのものだった。
ちょっぴりミーハーで、ノリが良くて、陽気。
わたしより1つ下とはいえ、生来姉御肌のせいか、日本の学生生活に不慣れなわたしをいろいろと手伝ってくれる頼もしい存在。
「・・!!なに、これ!。すっごい!温度で口どけの色分けをしてるの?」
「ふっふ、ここのケーキ、やばいでしょ。」
「この彩もすごいよね。何層にもなってて!」
「私もこういうの絶対作ってみせるんだから。私ね、この道にたどり着くまで、ちょっと回り道してたから、その分こだわりがあるんだ。」
思わぬさゆりちゃんの告白に、思わず手を止めてじっと見つめた。
「どんな?」
「奏花、いま、これ食べてて幸せ?」
「もちろん!ケーキって不思議だよね。この綺麗な外見と美味しさで、単純だけど、幸せになれちゃう。」
「そうそう、それよ!。私も、今まで、良いことばっかりじゃなかったけど、単純なもんで、意外と美味しいケーキ1つで気分が明るくなったりして。そういう気持ちって、大なり小なり、誰にでもあると思うわけ。だから私も・・・、そういうケーキを作りたいんだあ。」