桜雪
『子供』その言葉がだけが私の頭の中を

なんどもヘビロテする。

事実を言われただけなのに。

カイさんにいわれたってことが余計私の

心をかき乱した。


「子供って言わないでください!」


私が大きな声を出したのが驚いたのか

目を丸くしてカイさんが私を見た。


「ごめん。嫌だった?」


「嫌です。私は子供って言われるのが嫌いで、早く大人になりたくってだからあそこに行ったのに。母親が働いてるのは見ちゃうし。折角大人に慣れると思ったのに...」

溜まっていた感情をカイさんに当たってしまった。


「大人になりたくってあそこに行ったの?」


涙が溢れて嗚咽で喋れない私はカイさんの問いかけに

首を縦にふることしかできなかった。

「なんで大人になりたかったの?」


カイさんが泣きじゃくる私の頭にやさしく触れて

撫で始めた。

「毎日がっつまらなかったっ...大人の気持ちが母の気持ちをっしりたっかった...」

人に頭を撫でられるのなんていつぶりだろう

もしかしたらはじめてかもしれない。


人の前でこんなに泣くのはいつぶりだろう。


カイさんの優しさに触れるたび

心のどこかが反応して溢れる涙をとめてくれない。


カイさんが頭をなでるのをやめたと

同時に私は闇に包まれた。

今までにない温かい闇だった。



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