桜雪
「帰れとか言わないんですか?」


彼女が少し寂し気に問いかけてくる。


帰れなんて言うはずがない。むしろいてほしい。


俺が持っていないものを


君は持っているのだから。



「んー?言って欲しいの?」


またおどけたように言ってみた。

『不思議な人』そんな目で何度も見られたのは始めてた。


でも俺には君のほうがゆなちゃんのほうが不思議でたまらないよ。




「いや。別に...」


少しどもった彼女の声どこか懐かしい

母親の声に少し似ている気がした。



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