桜雪
「うん。」

俺の秘密を話した事で彼女の俺に対する警戒心

と不信感がなくなったのだろう。



「カイさんはカイって本名なんですか?」

はじめての彼女からの質問。

その怖いくらい綺麗な瞳に囚われそうになる。


「違うよ。源氏名だよ。」

ちがう。カイは本名だ。

浦木 櫂(ウラキ カイ)

それが俺の本名。なのになぜか本当のことが言えなかった。

「本名は秘密ですか?」

でも。そんなことより俺は聞きたかった。

「うん。まぁね。んな事よりなんでこんなとこいるの?」

なんで純粋そうな彼女がこんな夜の街にいるのだろう。


何の為に俺の店にきたのだろう。

彼女は黙ったままだった。

言えないことなのだろう。

「言いたくなかったら言わなくってもいいよ。」

と笑顔を向けてみた。

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