ただ君だけを。
第三章
「ただいま」
いつもどおり。いつもどおり。
その言葉を頭の中で繰り返し唱える。
「おかえり。ご飯食べるからリビング来なさいよ」
「いや、今日は食ってきたからいいや」
玄関の風景も、飼ってるインコの鳴き声も、母親の声も、すべていつもどおり。
「ちょ…夏輝!なつ…」
母さんの俺を止める声を無視して、まっすぐ自分の部屋に入る。
カーテンを閉めて、近くにおいてあったipodのイヤホンを耳につけ、布団にもぐりこむ。
隣からの声が一切聞こえないように。
「…っは…」
俺は、どうすればいい?
なにをすればいい?
これから…どうしたらいい?