ただ君だけを。
第四章
「葉山となにがあった?」
なにかあった、ではなくなにがあったと聞いてくる秋人。
そりゃ泣いてればなにかあったのは一目瞭然なんだろうけど。
「うぇ……っ」
さっきのことを思い出せば、また目頭と心の底が熱くなる。
「今日、葉山の誕生日だったんだよね?」
こくり。
優しく、ゆっくりと言葉を紡ぐ秋人の言葉に、涙のせいで震えながらもしっかり頷く。
今日6月2日は夏輝の誕生日。
毎年二人っきりでお互いの誕生日を祝うのが恒例になってた。
だから秋人との約束も断ったのに。