ただ君だけを。
小さく意気込んで、また走り出す。




ここの角を、右に曲がれば私と夏輝の家がある。




と、私の家の前の壁に見覚えのある黒い影。




間違えるわけない、見慣れた綺麗な横顔。




「な…つき?」


壁を背に、しゃがみこんでいる。


『学校行ってるんじゃないの?』と言おうとしたのに、立ち上がった夏輝に言葉を遮られる。




「ごめん」



俯いて、夏輝は言う。



「いや、私のほうがごめんだよ。なんか痛そうだったし…あ!それとね、『誕生日、おめでとう』」




その言葉に、夏輝はゆっくりと顔を上げた。






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