ただ君だけを。
キーンコーンカーンコーン…
無機質な音が下校の時間を知らせて、廊下は人でいっぱいになる。
「バイバイ。仕事頑張ってね!」
「うん。気をつけてね」
教室を出て行く秋人に軽く手を振って、私も教室を出る。
『一緒に帰りたい』と言いたいところだけど、委員会の仕事があるなら無茶なことは言えない。
靴を履き替えて、多くの生徒が歩く中を一人で歩く。
人が少なくなった頃、私は足を止めて顔を上げた。
そこには雲ひとつなく晴れ渡る大空。
夏が――――――始まる