ただ君だけを。
嫌われたかと思ったって言ってたけど、そんなことは天地がひっくり返ってもありえない。



愛して愛して愛して…いくら言っても足りない『愛してる』



本当は言ってしまいたい。




全てをぶちまけて、楽になりたい。



折れそうに細くて柔らかそうな体を抱き締めて、その唇にキスしたい。



でも。



それをするのは俺じゃない。


それ以上をするのも



怪我した君を支えるのも



俺じゃない。



さっきだってふらふらと危ない足取りで痛そうに顔を歪める君の手をとって、目いっぱい優しい声で『大丈夫?』と言ってやりたかった。




どうして君はあいつを選んだ?



どうして俺じゃないんだ?



こんなにも好きなのに。



「…っく…」


まだ座ったまま俯く俺の頬を、透明な涙が伝っていく。



…俺の心もこんな風に透明で、何一つ偽りなく君に接することが出来たらいいのに。





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