文実委員になったから



中庭に出ると、ぎらぎらと照りつける太陽を避けるように木陰に入り、お弁当を広げた。

まだ暑いけど、日陰のところは少しだけ涼しい。
そういえばもうすぐ9月だ。
夏休みが終われば、いよいよ文化祭本番が近づく。


この1学期、文化祭実行委員になってからあっという間だったなぁ……。


ほとんど毎日学校に残って文化祭のことを話し合って、夏休みに入ってからも集まりで学校には通っていた。


あまり休みって感じではなかったけど、いつの間にか文化祭の集まりが楽しみになっていた。


そう思えるようになったのも、相沢くんのおかげなんだ……。



「相沢くん……」



――ヴーッ、ヴーッ、ヴーッ。


「おわわっ!?」


スカートのポケットに入れていた携帯が突然震える。


驚きのあまり、身体がびくりと跳ね上がり、お箸で掴んでいた玉子焼きを落としてしまった。


「わ、私の玉子焼きが……」


しょんぼりしながら玉子焼きを拾ったあと、携帯を開く。


「……!」


まだぶるぶると震えている携帯は、今まさしく考えていた人からの着信を知らせていた。


「……もしもし」


深呼吸してから通話ボタンを押したけど、口から出た自分の声は暗かった。


〈あ、もしもし。香波?〉


「相沢くん……」


元気そうな相沢くんの声。身体は大丈夫なんだとわかって、少しホッとした。



< 136 / 248 >

この作品をシェア

pagetop