文実委員になったから
中庭に出ると、ぎらぎらと照りつける太陽を避けるように木陰に入り、お弁当を広げた。
まだ暑いけど、日陰のところは少しだけ涼しい。
そういえばもうすぐ9月だ。
夏休みが終われば、いよいよ文化祭本番が近づく。
この1学期、文化祭実行委員になってからあっという間だったなぁ……。
ほとんど毎日学校に残って文化祭のことを話し合って、夏休みに入ってからも集まりで学校には通っていた。
あまり休みって感じではなかったけど、いつの間にか文化祭の集まりが楽しみになっていた。
そう思えるようになったのも、相沢くんのおかげなんだ……。
「相沢くん……」
――ヴーッ、ヴーッ、ヴーッ。
「おわわっ!?」
スカートのポケットに入れていた携帯が突然震える。
驚きのあまり、身体がびくりと跳ね上がり、お箸で掴んでいた玉子焼きを落としてしまった。
「わ、私の玉子焼きが……」
しょんぼりしながら玉子焼きを拾ったあと、携帯を開く。
「……!」
まだぶるぶると震えている携帯は、今まさしく考えていた人からの着信を知らせていた。
「……もしもし」
深呼吸してから通話ボタンを押したけど、口から出た自分の声は暗かった。
〈あ、もしもし。香波?〉
「相沢くん……」
元気そうな相沢くんの声。身体は大丈夫なんだとわかって、少しホッとした。