文実委員になったから



「の、野川さんも出るって……本当なのか?」


いつになく真剣な顔で聞いてくる柏木くん。
それに少しびっくりしたものの、とりあえず「ほ、ほんとです」と答えた。


「野川先輩のクラスは、ミスコンもミスターコンも推薦で選んだそうなのですが、ミスコンのほうで選ばれてしまったそうです」


無理もない。野川先輩はスタイル抜群で綺麗で可愛くて、私たち後輩からの憧れの的だ。同級生の人たちも、そんな野川先輩を差し置いて自分が出ようなんて思う人すらいないのかもしれない。


そんな人が、昔は私と似ていて、引っ込み思案な暗い人だったなんて、いまだに信じられないぐらいだ。


そんなことを考えて純粋に野川先輩すごいなぁと思っている私とは対照的に、さっきから柏木くんは面白くなさそうに口を尖らせている。


「……相沢は、ミスターコン出るのか?」


いきなり問われた相沢くんは、動揺することなく、何故そんなことを聞かれたのか不思議に思った様子もなく、ただ平然と言った。


「いいや」


首を軽く横に振った相沢くんに、柏木くんは「ははっ、そうだよな」と、どこか無理しているような笑顔を浮かべる。


「……どうかしたんですか?」


「えっ!?な、何で?いきなりどしたの香波ちゃん」


慌てていつもどおりに軽く振る舞って見せようとする柏木くんだけど、やっぱりなんだか変なような気がしてならない。



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