文実委員になったから



「じゃあ、そろそろ戻るか」


「はい」


相沢くんはたこ焼き屋さんのほうはもう終わりらしく、私が怪我したこともあってクラスのほうを手伝ってくれるらしい。
でも、付けていたエプロンをはずしている相沢くんの姿を見て、私は少し残念な気持ちになる。


「相沢くんの作るたこ焼き食べたかったです……」


ぽつりとつぶやくと、相沢くんがにこっと笑って言った。


「明日もあるから、そう落ち込むなって」


「わぁ……はい!楽しみにしてます!」


やったー!明日こそ、絶対相沢くんのたこ焼き食べるぞー!


……あ、そういえば明日で文化祭が終わるんだ……。


明日……か。


言わなきゃ。相沢くんに。


改めて決意を固めると、相沢くんが「早く戻るぞー」と私に声をかける。


「はい!」


笑顔で答えて、相沢くんと並んで教室へと戻った。


中に入ると、アキちゃんが一番に私に飛びついてきて、心配してたんだよとか無事でよかったとか大袈裟だけど言ってくれて。


藤崎さんは、私に「ごめんね」と言ったから、私は笑顔でこう返した。


「えーっと、私、謝られたくて助けたわけじゃないんだけどなぁ……なんて」


偉そうに言ってみたけど、相沢くんの受け入りだ。


すると藤崎さんは、微笑みながら言ってくれた。



「助けてくれてありがとう。桜さん」



ごめんね、も大事だけど、ありがとうって言葉はもっと素敵な言葉だなぁなんて改めて思う。
私はどっちかというと、自分が何も悪いことをしていなくてもごめんなさいって言ってしまうことが多かったような気がする。


そのことに気づかせてくれたのは、やっぱり相沢くんだった。


「俺のセリフとるんじゃねーよ」


「えへへ。真似しちゃいました」


私と藤崎さんのやりとりを見ていた相沢くんが苦笑しながら言う。


文化祭1日目はいろいろあったけど、泣いても笑っても明日で終わり。


残り1日最後まで頑張って、それから相沢くんに告白するんだ!



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