文実委員になったから
ベンチへ行き、アキちゃんの隣に座ると、「はい」と透明なパックに詰められたたこ焼きが差し出された。
「持てる?食べれる?」
「大丈夫ですよ」
昨日火傷した左手を気にしてか、アキちゃんが少しおろおろしながら聞いてくる。
食べさせてあげようかなんて言ってくれたけど、それじゃアキちゃんが食べれないし、何より動かせないほどもう痛くはない。
「ありがとう、アキちゃん」
私が笑って言うと、アキちゃんは安心したのか美味しそうにたこ焼きをひとつ頬張った。
「ん!うっまーい!」
口にした瞬間、アキちゃんが目を見開いて叫ぶ。
それが聞こえたのか、相沢くんは一瞬こっちを見て笑ったあと、またたこ焼きを作る作業に戻っていた。
「早く香波も食べなよ!」
「う、うんっ」
つまようじを刺し、口へと運ぶ。
出来立てだからすごく熱い。
はふはふしながら何とか飲み込むと、たこと生地の美味しさが口の中に広がった。
「わぁ、ほんとに美味しいですね!」
これを相沢くんが作ったんだなと思うと尊敬しかない。
こんなに綺麗に作れるなんて本当にすごい、器用なんだなぁ相沢くん。
汗をかきながらせっせとたこ焼きを作る相沢くんを見つめる。
その姿は真剣そのもので、いつものゆるい感じとは全然違う。いわゆるギャップというものなんだろうか。ギャップが好きな子は、きっとこういう一面とかを見てキュンとするんだろうな、なんてぼんやりと思った。