文実委員になったから
相沢くんは嫌なんじゃないかな。
そのままの姿で廊下に出たら、やっぱりいろんな人に見られちゃうと思うし。
でも確かに、男の子と一緒にっていう感覚が少しなくなるのはその通りなんだけど。
アキちゃんから相沢くんに視線を戻すと、相沢くんはしばらくうーんと悩んだあと。
「あーもう、しょうがねえ!どうせ今日一日だけだしな!ほら、行くぞ香波」
「は、はいっ」
メイド服のまま、カツラもしっかりつけたままでずんずんと歩いて行く相沢くん。
アキちゃんはそれを見てケラケラ笑いながら、私にガッツポーズをしてみせた。
「頑張りなよ、香波!」
「う、うん。ありがとう、アキちゃんっ」
にっと笑うアキちゃんに大きく頷いたあと、私は大股でずんずん歩いて行く相沢くんのあとを慌てて追いかけた。
「まだ結構時間ありそうだからゆっくり回れるな。どっから行く?」
「相沢くんの行きたいところからでいいですよ!あ、お腹すいてるんですよね?」
「おー、とりあえず飯だな。なんか食いに行こ」
「あそこにしよーぜ」と、カレー屋さんをやっているクラスを指さす相沢くん。
「カレー好き?」
「はい!もちろんです!」
嬉しそうに笑った相沢くんを見て、ドキッと鼓動が大きくなる。
おかしいなぁ……。
女の子の姿の相沢くんなら緊張しないかなって思ったけど、全然そんなことない。
むしろ、普段と違う姿にいつも以上にドキドキしているような気がする。
でも、落ち着くんだ、私!
深呼吸をひとつして、相沢くんの後に続いてカレー屋さんに入った。