文実委員になったから



私は教室の隅の席で、静かに窓の外を見ている女の子を見つけた。


長くてまっすぐな黒い髪。
あの子だ、廊下でぶつかった時にチラシをぶちまけちゃった時の。


あの時は仲の良さそうなお友達がいたけど、今はひとり。クラス替えで離れちゃったのかな。
なんだかその横顔はすごく寂しそうに見えた。


何だか、去年自分を思い出す。
あの頃の私も、こうやって隅っこでひとり、外の桜を眺めていたっけ。


あの時、誰かに声をかけてくれる誰かがいたらな……と思っていた。


もしかしたら、あの子も待っているのかもしれない、空気みたいな自分を見つけてくれる人を。


私にとってその人は相沢くんだった。


私が今あの子に声をかけたら、私もあの子にとって相沢くんみたいな存在になれるのかな……。


「香波っ!」


「わわっ! な、なにっ?」


突然声をかけられ、後ろを振り向くと相沢くんがいた。


「始業式始まるから行こうぜ」


「う、うんっ」


教室を出ていく相沢くんのあとを慌てて追う。


始業式が終わったら、頑張ってあの子に声をかけてみよう……!



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