文実委員になったから
相沢くんが、あとから乗ってきたお客さんとぶつかった。
「相沢くん、大丈夫ですか……わわっ」
かろうじて私の後ろの壁に手をついて転ぶことはなかったけど、そのあと一気に他の人が乗ってきたものだから、相沢くんはその態勢のまま動けなくなってしまった。
うわぁ……相沢くんって、思ってた以上に背が高いんだ……。
って、そんなこと考えてる場合じゃないよ私!
相沢くんがっ……近いです……!
エレベーターの中はこれでもかってぐらいぎゅうぎゅうで、もう苦しい。
でも、胸が苦しい理由はきっとそれだけじゃない。
「桜さんごめん、大丈夫か?」
「だだだ、大丈夫、ですっ……」
男の子と密着状態のまま話しかけられて、私が大丈夫なわけがない。
相沢くんが、お互いの体温が感じられるほどの距離にいて、心臓が破裂してしまいそうなぐらいバクバク言ってる。
もう……なんか、うまく息が出来ない……!
たかが4階に辿り着くまでの時間が、とてつもなく長く感じた。
「やっと着いたー。苦しくなかったか?
……って桜さん?」
4階に到着し、やっとエレベーターから解放された。
ほぼ窒息寸前だったものだからぜーぜー言いながら酸素を取り込む私に、相沢くんは「大丈夫?」と言いながらも苦笑いを浮かべていた。