文実委員になったから
夏と準備と恋心
夏休み突入。
と、いうわけで私は学校にいる。
もちろん、文化祭の準備をするためだ。
他の文実委員の人がちゃくちゃくと集まる中、私は一人、教室の隅でそわそわしていた。
「相沢くん、遅いな……」
もうすぐ午前10時。
10時になれば、各々の仕事を分担するためのちょっとした委員会が開かれる。
授業はよくサボるけど、今までの相沢くんを見る限り委員会も準備もきちんと参加してくれるとは思うんだけど……うーん、遅い。
珍しいな、なんて思いながら、私はトイレに行くため教室を出た。
と、同時にぶつかった。
「っ!?」
「っと、あぶね」
勢いよくぶつかったせいで転びそうになった私を、ぶつかった相手の人が手をひいて支えてくれた。
「す、すいません!私……ちゃんと前見てなくてっ」
「俺もごめんね。大丈夫?ケガとかしてない?」
「私は大丈夫ですっ」
素晴らしく優しい声が返ってきて、私は顔を上げると、これまた優しい笑顔を浮かべている男の子と目が合った。
「あ……柏木君……?」
確かこの人は……柏木翔太くん。
初対面だったけど、文実委員だったからお互い知っていて、その流れで資料を探すお手伝いをしたんだっけ。
「香波ちゃん!今日はひとりなの?」
「えーっと、相沢くんも来るはずなんだけど、連絡来てないのでわかんないです」
「そっかー!まあ、お互い文化祭頑張ろうね」
「はい!」
柏木くんと別れてトイレに向かい、そしてまた教室に戻ってくると、委員長の野川先輩が言った。