文実委員になったから



「え……」


“ごめんね”の意味が理解できなくて、反射的に顔をあげる。


柏木くんは少し悲しそうに笑っていた。


「いきなりあんなこと言って、相沢にもつっかかって、香波ちゃん困らせちゃったでしょ」


あ、それに対しての“ごめん”か……。


「いえ!私のほうこそ、勝手にテンパっちゃってごめんなさい!」


勢いよく頭を下げると、柏木くんは「いいよいいよ」と許してくれた。


柏木くん、意地悪く笑ったり、迫ったりしてきてちょっと大変だったりするけど、やっぱり本当は優しいひとなんだと思う。


だって、今柏木くんは私のことを気遣って謝ってくれた。
これは嘘の姿なんかじゃない。


考えてることがわかんなくてちょっと怖いと思うのは事実だけど。


私を本気で好きでいてくれているのかもしれないし、相沢くんにあんな態度とっちゃうのだって、きっと何か理由があるに違いない。


私がちゃんと柏木くんに慣れて、相沢くんといる時みたいに普通に話せるようになったら。


柏木くんは本当の気持ちを見せてくれるかもしれない。


戸惑うことはあるけど、天使の柏木くんが本当の姿だと信じよう。



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