いつかの花。
零章・雷鳴
テスト最終日
五月二十日金曜日。
「――そこまで。後ろの人は解答用紙を回収しなさい」
魔の中間テストが終わった。
クラス全員が、わぁっと歓声をあげたり友達に「もう俺だめだ~今回マジ死んだ~」「俺ももうだめ~追試マジ決定~」などと言いながら泣きついたりしている中。
私、小野蘭花(おのらんか)は、親友に抱きつかれていた。
「え~ん! 蘭花、あたしどうしよぉ~。絶対絶対今回赤点! 追試やだ~っ!!」
「まり子……。昨日の夜に私に長電話なんかしてくるからでしょーに。止まらないの自分でわかってたくせに」
「はうっ! それ言われちゃうとキツイ~。でもでも、蘭花だって昨日の朝は勉強できてなかったって言ってたのに! なんで余裕そうなのぉ!?」
「その後に勉強したからに決まってるでしょーが。午後が丸々空いてたから、テスト勉強してた」
「ずるい!」
「ずるくないない」
「だって、だって……日本史なんか意味わかんないのよぉっ!」
ついに、おいおいと半泣きになって抱きしめる力を強くしたまり子。
私はといえば、背中をさすってあげながら「はいはい」と言うしかない。
今日でテストは終わりになる。
明日明後日と休みが入り、来週はテストの返却があるんだけど……今はそんなことは考えたくない。
考えなくてもいいことはできるだけ逃げたい。
できるものなら、永遠に。
まあ、それがかなわないとうことは重々わかっているけど。