いつかの花。

 今日、堤巳兄様を紹介される前の、真人お父様の言葉の中にあって、わからなかったもの。

 湖子に聞けばいいか、とも思っていたけれど、堤巳兄様に尋ねるのが一番手っ取り早いように思えた。

 なんやかんやと言いながらも、堤巳兄様はわかりやすく説明してくれるいい先生だから。

 かなりスパルタだけど。



「舎人? ああ、皇族や豪族に使える男たちのことだよ。警備や雑用なんかは彼らに頼むといい」


「わかりました」



 とねり、というのは雑用もしてくれる武官さんとでも思えばいいかな。









「じゃ、俺はそろそろ帰ろうかな。またね、蘭花ちゃん、湖子殿」



 そう言うと、堤巳兄様はスクッと席を立った。

 優雅な立ち姿は、さすがだと思わせる。

 にっこり笑顔は間違いなく真人お父様からの遺伝の賜物。



「はい、おやすみなさいませ」


「ええと……、今日はありがとうございました!」



 ぺこりっと教えられた通りの礼をした。



「うん、合格。じゃ、またね」



 そうして強烈な台風……もとい、堤巳兄様は颯爽と部屋から退出していった。



 次の勉強会は五日後。

 そのことを思うと、少しだけ、いや本当はかなり、気が重くなった。


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