いつかの花。

 今の私の中では、逆らってはいけない人ナンバーワンは堤巳兄様だ。

 ちなみに、この地位は永遠に不動のものだろうけれど。

 堤巳兄様異常に恐ろしい人なんて居て欲しくない。



「さ、今日も勉強しましょう」



 湖子の文句のつけようもなく可愛い笑顔でそう告げられる。

 再び溜め息を零し、私は文字の練習を兼ねた漢詩の書き取りを始めた。









「おお、蘭花。元気にしとったか?」



 慣れない筆で、まるでミミズののたくったような文字らしきものを書いた書簡が机の横に積み上げられているのを見て、深く溜め息をついた時だった。

 真人お父様が部屋のすぐ前まで来ていたことに気づいたのは。



「お父様……っ! お、お帰りなさいませ」



 慌てて立ち上がり、礼をする。

 そういえば、今日会うのは初めてだ。



 ……つくづく自分の寝坊が悔やまれる。

 明日から早起きできるようにしなくちゃ。


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