いつかの花。

 真人お父様……。

 ……言いふらさないでください。

 お願いですからっ!!



 切実に願った。

 けれど、それが無駄なんだろうな、ということもなんとなく悟る。

 なんてたって、相手は真人お父様。

 仕方ない。

 そういうことも世間にはある、とここ最近で骨の髄まで思い知った。

 某養父や、某采女や、某鬼畜義兄のおかげで……。



「会ってくれるかの……?」



 自分の養父にこんな表現を使うのはおかしいかもしれないけれど……、今、真人お父様のつぶらな瞳はキラキラと輝きを放っていた。

 断れば罪悪感が。

 頷けば安堵が、もたらされることは、想像に難くない。



「しょ、承知いたしました……」



 そうしてぎこちなく頷けば、真人お父様はにっこーりと笑んだ。



「ほっとしたぞい。すまぬな、蘭花」


「いえ……」


「相手はその場で言おうかの。楽しみは取っておくものじゃ」



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