いつかの花。
「ちょっと、おどきなさいな」
「う、わ……っ!」
急に彼をぐいっと押しのけて、シイナが私の前にずいっと出てきた。
「小野蘭花。今からわたくしの言うことをよくお聞きなさい」
「それは、いいけど……」
一体、何なのだろう。
そう思っていると、シイナの向こうにやっと起き上がったサノが見えた。
鼻をさすっている所を見ると、押されて倒されて転んでぶつけて、かなり痛かったらしい。
ご愁傷様。
「よくお聞きになってね。あなたには、これからとある時代に行ってもらいますわ」
声に従って、再びシイナに視線を戻した。
眉根は寄せながら。
いきなりそんな突拍子もないことを言われて、『はいそうですかわかりました』なんて、とてもじゃないけれど、言いたくない。
「いつの時代なの? ていうか、どこよソレ」
「あなたの生きていた時代からは、千三百年と少し前でしてよ」
せ、千三百年と少し前っ!?
平安時代が確か千年前だから、それ以前よね。
頭の中で、計算機と、習ったばかりの日本史の範囲とを重ね合わせて計算していく。
今が、二千八年で、約二千年としたら、西暦七百年代……?
それって、いつの時代だったかな……。