いつかの花。
「ほら、まり子。追試の勉強はついててあげるから。英語のグラマーと古典と日本史だけだけどね。数学は自分でやって。私もうあの範囲やりたくないし」
「うう~、そんなにたくさん追試ありそうな自分がホントいやっ!」
「テスト週間に入ってからもそこそこにしか勉強してないから、そのツケでしょ」
「わ、わかってるーっ! 追試がんばるもんっ!」
「うん、がんばれがんばれ」
こぶしを握りしめて、熱く決意を示すまり子を腕から放して見る。
癖毛の黒髪ボブがひょこひょこ揺れて、すごく可愛らしい。
私の可愛げのない真っ黒な直毛とは、本当に大違い。
背の低い親友は急ににっこりと笑い、荷物を片付けだした。
「ねえ、蘭花。放課後ちょっと駅前行かない? ケーキバイキングのできるお店が出来たってお姉ちゃんから聞いてたんだぁ」
「あ、ホント? いくいく~」
私も荷物を片付け、ガタガタ椅子を動かして軽く整えた。
こういうところがA型って言われるんだろうなぁ~。
今更だけど。
「あ、でもお金あったかな私……」
「んー? なかったら貸すからいいよ? 追試の勉強見てもらわなきゃだし」
「そう? ごめんね、千円しかない。月曜日には返すから!」
「おっけー。じゃ、行こっか!」
教室を出ると、廊下は教室以上にガヤガヤと騒々しかった。
その中に、見慣れた金髪を発見する。