いつかの花。
「そう大して年数はかからなくてよ。その間の記憶も、戻った時に差し上げるわ。悪い話ではないはずでしよう?」
「そ、そうかもしれないけど、その間の元の世界の私はどうなるの!?」
「あなたがそのまま元の世界に居たとおりの人生を歩むことになりますわね」
「私は居ないのに?!」
「元の世界に残って生活をするのは、あなたの影のようなものでしてよ。元はあなたの一部なのだから、なんら問題はありませんわ。いわば、あなたの元の世界の目印のようなものね」
あ、頭が……。
次第に難しくなっていく話に、頭の中が混乱してきた。
情報を一度に与えられて、整理しきれない。
つまり、私が他の時代にいる間は、残された私の一部が元の世界で生活してて、私が帰った時にはその間の記憶がその影からもらえるってこと?
「ふふ。理解できまして?」
「な、なんとなく……」
「それくらいで上出来ですわ。さ、習うより慣れろといいますもの。さっさとやることやってきてくださいな」
シイナはサラリと、何でもないことのように言って微笑んだ。
「い、いきなりすぎるわよ!」
私の至極当然の主張に、二人は何やら背後から暗雲を漂わせる笑みを浮かべた。