いつかの花。

 確か、私が居たのは五月だったよね?

 高校二年生になって初めての中間テストが終わって、まり子と打ち上げパーティー的なケーキバイキングに行っていたのだから、間違いない。



「あのー……今って、西暦何年ですか?」


「ほぉ。また可笑しなことを言う子じゃのぅ。せいれきとは何じゃ? それに、何年とはな。んなもんはわからん」


「わ、わからないんですか……?」


「わが国の暦法は進んでおらんのでな。ないのじゃよ。すでに滅びた隋や、今を栄える唐の国にはあるようだがのぅ」



 唐?

 ってことは、本当に飛鳥なんだ……。

 栄えてるってことは、まだ初唐なんだよね。



 日本史と世界史を同時に行ってくれていた学校のカリキュラム制度に、少しだけ感謝した。

 大感謝しないのは、テスト範囲が馬鹿広かった恨みだ。



「そうですか……」


「して、可笑しなおなごよ。そなた、名は何と申す?」



 ここって、偽名を使うべき?

 自分の中で疑問が湧き起こった。
 会ったばかりの見知らぬ人間、しかも時代も常識も違うであろう人に本名をそのまま名乗って、怪しまれないのだろうか。

 でも、こんな人の良さそうな人に嘘つくのはなぁ……。

 にこにこ顔のこの人を騙すのは、何だかとても気がひけた。



「……小野蘭花と申します」

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