いつかの花。
「そう怪しまんでくだされ。父親の名が言えぬということは、どこぞの隠し子であろ」
なんて答えたらいいんだろう。
小野真人さんの頭の中では、どこかの誰かに隠し子疑惑がかかっているようで、その人に少しだけ申し訳なくなった。
「…………」
「とりあえず、その衣装を着替えなされ。唐の国か、その先の世界の民の衣装を着てみたくなった、気持ちはわかるがの」
「ええと……はい」
「よしよし」
誤解はそのままにしておいて、とりあえずはこの男の人に着いていくことにした。
おなか減ったなぁ。
ああ、ケーキもっと食べとけばよかった……。
どうせ元の時代に戻るまでは食べられないんだし。
体重を気にして、腹八分目にしていた自分を、小野真人さんの後ろに着いて歩きながら後悔した。