いつかの花。

「河瀬~!」



 人ごみの中で頭ひとつ飛びぬけた金髪頭が振り返った。

 河瀬は驚いたような顔をした後、破顔して近づいてくる。



「小野じゃん。久しぶり~」


「うん、久しぶり。元気? テストどう?」


「ちょ……そこは普通きかなくねぇ?」


「あーわかった。きかない」


「そうして……二人で遊び?」



 河瀬がまり子を見て、また私に視線を戻した。

 多少声が大きいのは、人ごみの中だから仕方のないことだ。



「うん、そう。河瀬君も行く? ケーキバイキングだけど」


「うわっ、それマジ勘弁!」


「河瀬、甘いのダメだもんね……」



 私の言葉に反応したのはまり子だった。

 クワッと、河瀬に掴み掛かりそうな勢いで、睨んでいる。



「それ物凄く勿体無いよっ!? 絶対絶対、人生の半分を損してる!」



 まり子の剣幕は、とにかく凄い。

 河瀬も、若干引いている様子だ。



「いや……まあ、苦手は苦手ってことで」


「うわー、勿体無い」



 信じられない、と顔に書かれたまり子を見て、私は苦笑するしかない。



 まったく、まり子ってば。



 見上げれば、河瀬も同じように苦笑していた。

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