いつかの花。
よよよ、と泣きまねをする真人さんに、なぜかまり子の姿が重なって見えた。
天然っぽい人たちだからなぁ、と納得はいくけれど。
小柄なおじちゃん、といった感じの真人さんには、なぜか『困らせては可哀そう!』という気にさせられる。
その上、真人さんは、いわば私の恩人なのだ。
頼み事などは、できるだけ聞き入れて、恩に報いたい、と思う。
こんな所も、A型といわれる所以なんだろうな……。
まり子に『絶対A型! それ以外に考えられない!』との宣告を受けたことまで思い出してしまった。
「可愛い可愛い娘を着飾らせたいというこのおいぼれの心を汲んではくださらんかのぅ……」
「…………わかりました。ありがたく頂戴いたします」
先ほどからずっと、この『もらってくれ』『もらえません』の押し問答を繰り広げていたのだけれど、双方一向に折れる気配はない。
そして、ついに私が折れた、というわけだ。
ガクッと力が抜けて肩を落とした私の視界に、背中に流されていた自分の黒髪が見えた。
それをスイッと手ですくい、背中へと戻す。
私が承諾した時、周りで見守っていたらしい何人かの女の人たちがホッとしたように息をついていたのが妙に印象的だった。