いつかの花。
それにしても、なんて、ステキな女の人!
正直、かなり羨ましいけれど。
現代に居て、東京でも出歩いていたなら、まず間違いなくスカウトされるだろう。
「えっと……どちら様ですか?」
「はい、湖子と申します、蘭花様」
「そなた付きのウネメじゃ。好きになさるがよいぞ」
うねめ?
聞きなれない単語に、眉をしかめたのが自分でもわかった。
それに、好きになさるがよいぞ、って……。
まるで、人を物かなにかのように言う真人お父様に、戸惑いを覚える。
「それじゃ、わしは自室に戻るのでな。ユウゲはそこの湖子に言うとよい」
「は……はい、わかりました」
「それではのぉ~」
ふぉっふぉっふぉっとヒゲを撫でながら部屋を出ていく真人お父様に会釈をして見送った。
どうも、真人お父様はヒゲを撫でるのが癖らしい。
さて……。
そうして残されたのは、私と、湖子さんの二人だけだった。