いつかの花。

 そういえば……。


 あの二人……サノもシイナも、『タイムスリップしてきたことを誰にも言ってはいけない』なんてことは言っていなかったはず。


 なら……、少しの人だけになら、話しても大丈夫だよね?



「えっと……湖子さん?」


「ですから、わたくしのことは湖子で構いません」


「そうじゃなくて、ね。私、実は未来から来たの」



 さあ、どう返してくるんだろう。

 鵜呑みにして、納得するか。

 はたまた、奇異なものを見る目で睨まれるのか。



 きょとんとした湖子さんを眺める。

 彼女は、どう反応してくれるんだろうか。

 湖子さんの次の反応を、ジッと待った。



「あら、未来からとは随分突飛な話でございますね。何年先からいらっしゃいましたの?」



 アッサリと、湖子さんはそう尋ね返してきた。

 年頃の女の子らしく、キラキラとした目をして、可愛らしくにっこりと笑みながら。

 それはもう、こちらが拍子抜けしてしまうくらいに、アッサリと。



「千四百年弱よ」


「まあ、ものすごく先ですのね……」



 しみじみとそう呟く湖子さん。

 逆に、私の方が釈然としない気分になった。


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